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     その歌声は雲間から照らす、ひかり。
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2024/05/17 (Fri)
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2012/02/17 (Fri)
※悲恋
 

 
 
「ハル、愛している。」
 
 
 
優しく手を取られて、恭しく指にキス。
その伏せられた瞼に、震える睫毛に、
(あ、真斗君…まつ毛が長い…)
場違いにも、そんなことを思う。

並んで座った距離は近く、その暖かな体温を感じられるのに
心はひどく冷え切っていた。
何度も繰り返されるキスや甘い言葉は私を幸せにするのに、
私はそれに頷くこともできない。
彼の言葉を信じたいと思うのに、そんな未来は来ないことを知っている。
 
立場や境遇の、違い。
背負ってきたものの大きさの、違い。
 
例えば、私が彼の言葉に頷きその手をとってしまったら、
それこそたくさんの障害があるだろう。
大切にしていたものを、彼が失ってしまうかもしれない。
 
 
“愛があれば”なんて言えるほど、私は強くない。
 
 
もっと自分に自信があれば、彼を笑顔にできるのに。
私はずっと、彼の顔を曇らせてばかりいる。
こんな顔をさせたいわけじゃないのに、この現状を変えられない。
自分のふがいなさに泣きたくなる。
けれどそんな資格もないから、静かに眼をとじた。
彼を見れば、彼を感じれば、それだけ気持ちがつのる。
だから、私は否定する。


 
彼の言葉を、彼の思いを。
私の心を、二人の未来を。
 
 
 
「すまない。困らせたいわけじゃない……」
そっと離れた手のぬくもりを求めて彷徨ってしまった視線を
ごまかすように瞬きをする。
何か返事をしなければと思うのに、
まるで鉛を飲み込んだかのように、喉で言葉がつかえた。

「………っこのまま、お前をさらってしまえたらいいのに……!」

まるで、血を吐くように言葉を吐いた彼の言葉に、
我慢しきれなかった涙が、ほろりと落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
「さよなら届かぬ人」
 
お題は「Cock Ro:bin」様からいただきました。

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2012/02/14 (Tue)
はじめまして、香菜と申します。
春歌への愛がたかまった結果、サイトが出来上がってしまいました…。

急ごしらえで作ってしまったので、至らない点が多いと思われますが
ご意見、リクエストなどありましたら
善処してゆきたいと思いますので、よろしくお願いします!

今回はレンと音也のバレンタインネタをアップしたのですが、
どちらも当日の話じゃないことにアップして気づきました;
レンの方は、後日春歌視点のお話をアップしたいと思います。

とりあえず、レン誕生日おめでとう~!!

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2012/02/14 (Tue)

※トキヤ+音也のユニットデビュー設定。
 


 
「あ、あのっ!」
大好きな春歌の声を耳にとらえた。
そんなに大きな声ではなかったけど、
春歌の声なら雑踏の中でもきっと聞き分けられる自信がある。
 
現場に来るとは聞いていなかったから、
様子を見てすぐに帰ってしまう可能性が大きい。
帰る前に少しでも話がしたいな~と思って、そちらを振り向いた。けど。

(えっ。)

思わず、動きが止まってしまった。
春歌が話しかけていたのは、トキヤで。
そして、顔を赤くさせた春歌が持っていたのは可愛くラッピングされている箱。
 
当日まではまだ日にちがあるけど、ここ最近特集によく組まれているから、
それが何か、なんて。考えるまでもなくて。
「義理チョコ」と言うには、手の込んでいるそれを、
トキヤは普段であればカロリーを気にして言うはずの断り言葉も口に出さず、
少し表情を緩めて受け取っていた。
 
 
まるで、視界が黒く染まるような錯覚。
 
                     
春歌が、トキヤ―――もとい、HAYATOに憧れていたのは前から知っている。
HAYATOがトキヤと同一人物であるのはつい最近知ったことだけど。
それでも、憧れは憧れで、それ以上でもそれ以下でもないと思っていた。
二人を遠目に見ながら、ぎりりと、歯を食いしばる。
(春歌が、好きだ。――――やっぱりあきらめられない。)

醜い感情とともに再確認するのは、強い “君への思い” 。
 
トキヤとの話が終わったタイミングで、自然な風を装って春歌に近づく。
それに気づいた春歌が、少し驚いた顔をする。
(あ、もしかしたら)
今、自分の顔はひきつっているかもしれない。
そう思ったけど、今引き返すのも不自然だし、
なにより春歌と少しでも話がしたい。
自分の気持ちに、いつだって正直でいたいから。
だから、俺は―――

「はる、」
「お、おとやくん!」

珍しく言葉をさえぎって俺の名前を呼ぶ春歌は、
もしかしたら、先程トキヤと話していた時よりも顔を赤くさせていて。
(……えっ?)
びっくりして、春歌の細かく震える指先を凝視する。
「あ、あの…っ!」
そう言って、
まるですがるように震える指で俺のジャケットスーツの裾を握った春歌は、
「2月14日、お時間を作れませんか……?」
と言った。
 
 
トキヤには当日じゃない日にチョコを渡して、
俺には当日に時間を欲しい、と言う。
 
 
かっ、と顔が赤くなったのが自分でもわかった。
「えっ???」
「あっ、いえ、お忙しいのであれば――」
そう言いながら離れそうになった指先を、
とっさに捕まえて力いっぱい握りしめる。
「ううん!今ちょっとスケジュールわからないけど、忙しくても作る!
時間作るから!!」
まるでわらにもすがる勢いでそう言い募ると、
春歌が、俺の大好きな顔で笑った。
 
 
 
 
―――今年の2月14日はトクベツな日になりそうです。
 

 
.。.:*゚・*:.。. HappyValentine.。.:゚・*:.。.




「トクベツをちょうだい?」

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* ILLUSTRATION BY nyao *