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     その歌声は雲間から照らす、ひかり。
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2012/02/14 (Tue)

※トキヤ+音也のユニットデビュー設定。
 


 
「あ、あのっ!」
大好きな春歌の声を耳にとらえた。
そんなに大きな声ではなかったけど、
春歌の声なら雑踏の中でもきっと聞き分けられる自信がある。
 
現場に来るとは聞いていなかったから、
様子を見てすぐに帰ってしまう可能性が大きい。
帰る前に少しでも話がしたいな~と思って、そちらを振り向いた。けど。

(えっ。)

思わず、動きが止まってしまった。
春歌が話しかけていたのは、トキヤで。
そして、顔を赤くさせた春歌が持っていたのは可愛くラッピングされている箱。
 
当日まではまだ日にちがあるけど、ここ最近特集によく組まれているから、
それが何か、なんて。考えるまでもなくて。
「義理チョコ」と言うには、手の込んでいるそれを、
トキヤは普段であればカロリーを気にして言うはずの断り言葉も口に出さず、
少し表情を緩めて受け取っていた。
 
 
まるで、視界が黒く染まるような錯覚。
 
                     
春歌が、トキヤ―――もとい、HAYATOに憧れていたのは前から知っている。
HAYATOがトキヤと同一人物であるのはつい最近知ったことだけど。
それでも、憧れは憧れで、それ以上でもそれ以下でもないと思っていた。
二人を遠目に見ながら、ぎりりと、歯を食いしばる。
(春歌が、好きだ。――――やっぱりあきらめられない。)

醜い感情とともに再確認するのは、強い “君への思い” 。
 
トキヤとの話が終わったタイミングで、自然な風を装って春歌に近づく。
それに気づいた春歌が、少し驚いた顔をする。
(あ、もしかしたら)
今、自分の顔はひきつっているかもしれない。
そう思ったけど、今引き返すのも不自然だし、
なにより春歌と少しでも話がしたい。
自分の気持ちに、いつだって正直でいたいから。
だから、俺は―――

「はる、」
「お、おとやくん!」

珍しく言葉をさえぎって俺の名前を呼ぶ春歌は、
もしかしたら、先程トキヤと話していた時よりも顔を赤くさせていて。
(……えっ?)
びっくりして、春歌の細かく震える指先を凝視する。
「あ、あの…っ!」
そう言って、
まるですがるように震える指で俺のジャケットスーツの裾を握った春歌は、
「2月14日、お時間を作れませんか……?」
と言った。
 
 
トキヤには当日じゃない日にチョコを渡して、
俺には当日に時間を欲しい、と言う。
 
 
かっ、と顔が赤くなったのが自分でもわかった。
「えっ???」
「あっ、いえ、お忙しいのであれば――」
そう言いながら離れそうになった指先を、
とっさに捕まえて力いっぱい握りしめる。
「ううん!今ちょっとスケジュールわからないけど、忙しくても作る!
時間作るから!!」
まるでわらにもすがる勢いでそう言い募ると、
春歌が、俺の大好きな顔で笑った。
 
 
 
 
―――今年の2月14日はトクベツな日になりそうです。
 

 
.。.:*゚・*:.。. HappyValentine.。.:゚・*:.。.




「トクベツをちょうだい?」

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