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     その歌声は雲間から照らす、ひかり。
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2012/02/17 (Fri)
※悲恋
 

 
 
「ハル、愛している。」
 
 
 
優しく手を取られて、恭しく指にキス。
その伏せられた瞼に、震える睫毛に、
(あ、真斗君…まつ毛が長い…)
場違いにも、そんなことを思う。

並んで座った距離は近く、その暖かな体温を感じられるのに
心はひどく冷え切っていた。
何度も繰り返されるキスや甘い言葉は私を幸せにするのに、
私はそれに頷くこともできない。
彼の言葉を信じたいと思うのに、そんな未来は来ないことを知っている。
 
立場や境遇の、違い。
背負ってきたものの大きさの、違い。
 
例えば、私が彼の言葉に頷きその手をとってしまったら、
それこそたくさんの障害があるだろう。
大切にしていたものを、彼が失ってしまうかもしれない。
 
 
“愛があれば”なんて言えるほど、私は強くない。
 
 
もっと自分に自信があれば、彼を笑顔にできるのに。
私はずっと、彼の顔を曇らせてばかりいる。
こんな顔をさせたいわけじゃないのに、この現状を変えられない。
自分のふがいなさに泣きたくなる。
けれどそんな資格もないから、静かに眼をとじた。
彼を見れば、彼を感じれば、それだけ気持ちがつのる。
だから、私は否定する。


 
彼の言葉を、彼の思いを。
私の心を、二人の未来を。
 
 
 
「すまない。困らせたいわけじゃない……」
そっと離れた手のぬくもりを求めて彷徨ってしまった視線を
ごまかすように瞬きをする。
何か返事をしなければと思うのに、
まるで鉛を飲み込んだかのように、喉で言葉がつかえた。

「………っこのまま、お前をさらってしまえたらいいのに……!」

まるで、血を吐くように言葉を吐いた彼の言葉に、
我慢しきれなかった涙が、ほろりと落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
「さよなら届かぬ人」
 
お題は「Cock Ro:bin」様からいただきました。

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